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2022 バーガンディー・ヴィンテージ・レポート 

Burgundy 2022 Vintage Report
2022 バーガンディー・ヴィンテージ・レポート
By アダム・ブラントゥレット、Fine wine Senior Buyer 

 

2022ヴィンテージは、ブルゴーニュが、例え前例のない極端な天候に直面しても、力強く明るい未来を持っていることを証明してくれています。
実際、気候レポートでは、2022年は、記録上最も乾燥し、最も暖かく、最も日照に恵まれた年とのデータが記録されています。
さらに、私は、5週間に渡る当地でのテイスティングの結果、素晴らしく忠実に表現された個性、純粋さ、フレッシュ感に溢れる一貫して優れたヴィンテージであることを確信しています。 結果として、気候変動が常態化している近年のヴィンテージの中で、2022年は最も成功したヴィンテージと言えます。

収穫は、多くのドメーヌが、9月前には収穫を始めています。しかし、ワインがブルゴーニュの抑制を保っていることに驚く必要はありません。例えば、20世紀の偉大なヴィンテージ1945、1947、1959そして1964年を振り返ってみると、その多くが例外的に温暖だったことが分かり、当時と現在との違いは、それらが10年に1度の特別な気候であったことが一般的になったことにあります。 さらに重要なことは、ブドウ栽培とワイン醸造に於いてその知見が格段に進歩していることによって、生産者自らが、そのプロセスをこの新しい常態に適応させて来たことにあります。

生産量について言えば、白赤共に過剰になること無く健全な量に留まり、ほとんどの生産者が、上限の約10%下回る収量に抑えていることを伝えています。実際、2020年と比較すると、白は、ほぼ同量で、赤は少し増加しています。 ワインについて、白は、2017年と2020年をスタイル的に彷彿とさせる素晴らしいヴィンテージですが、赤ワインについては、同列と見るヴィンテージを見つけるのは難しいくらいの出来映えを見せています。敢えて言えば、2017年のエレガンス、魅力、香りに加え、少し凝縮感が加わっています。最近2012年を飲み始めていますが、そことも類似点を見ることが出来ます。

IN THE VINEYARD / ブドウ畑

生産者にとって、悪夢の様な2021年とは対照的に、今回の生育期は、ストレスの無いリラックスした年となりました。彼らは、水不足と日焼けのリスク以外の課題は比較的少ないと伝えて来ています。しかも、この2つの脅威はもはや常態化しており、栽培家はブドウへの影響を最小限に抑える対策が出来る様になっています。

2022年は、ここ数年同様、冬は乾燥し比較的穏やかで、芽吹きは少し早い 3 月下旬に始まりました。 幸いなことに、成長は僅かに遅くなりました。 4月の初めまでに、その生育は直近20年の平均を下回っていました。

4月上旬、北からの寒気団の影響で気温が下がり、近年繰り返されるお馴染のストーリーが再び始まりました。その為、霜の危険が大きく迫り、約10日間(4月2〜11日)に渡り、生産者たちは厳戒態勢を敷くなどの対策に迫られました。(ロウソクを灯し、風力タービンを焚き、アスパレーション・システムやヒーティング・ケーブルを作動させたのです。)しかし、幸運なことに、その脅威は限定的なもので、生産量に大きな影響を与えませんでした。

5〜8月にかけての気温も平均よりも高かいものでしたが、大きな問題では無く、それよりも、2003 年や 2020 年の様な猛暑に遇わなかったことが幸いでした。 6月は、恐らくこのヴィンテージを救うことになりました。 春を通じて降水量は例年より大幅に少なかったのに対し、6月にはブルゴーニュ地方の降水量は通常の約2倍となったからです。 多くの生産者は、これにより貯水量が補充され、ブドウの樹が暑く乾燥した夏を乗り切ることが出来たと語っています。

ジュヴレ・シャンベルタン村では6月22日の雨が多過ぎたと見られており、実際、僅か10分間で100ミリの豪雨となっていました。 多くのブドウの樹は、溜まった水の中に放置され、大量の泥がブドウ畑から村に流れ込みました。 これらのほとんどは、Hôtel Les Deux Chèvres / オテル・レ・ドゥ・シェーブルのセラーをはじめ幾つかのセラーに保管されるはめになりました。 幸運なことに、その後の暖かく乾燥した天候となった上、異例のヘリコプターによるボルドー液(殺菌剤)のアペラシオン全域への散布により、被害は最小限に抑えられました。

その6月以降、夏は平年よりも乾燥し、晴天が続き、暖かく、ほとんどの生産者は、困難なブドウの樹の生育取り組んでいる時、圧力弁として機能する小量の雨が降ったと伝えますが、 一部の若樹や、斜面の上部にある通常水はけの良いとされる石の多い土壌に位置する区画では、水分ストレスに関する問題が一部見受けられた様です。 

HARVEST / 収穫

この様に暖かく、太陽の光が降り注ぐ生育期を過ごしたことで、収穫が8月に始まったのは驚くことではありませんでした。実際、コート・ド・ボーヌの白ブドウと早熟の赤ブドウは、8月24日頃から収穫が始まり、コート・ド・ニュイでは、ほとんどの生産者が8月末か9月初めの数日間に収穫を始めています。
栽培家たちから得た印象では、2018年、2019年、2020年と比較して、収穫時期の選択は比較的容易であったということでした。これは、恐らく早熟な収穫の頻度が増えている影響と見られます。収穫日にはばらつきがあるものの、収穫が遅過ぎたり、早過ぎたりする様なことは、もはや無くなっています。
2022年、収穫時のブドウの品質は素晴らしいものでした。私自身、幸運にも9月第1週にこの地を訪れ、選果台で見たピノ・ノワールは、ドライフルーツやレーズンのような兆候は見受けられず、極めて見事なものでした。
生産者の中には、2020年同様、果汁の量が通常の予想よりも少し少なかった語る人もいます。 暖かく乾燥した条件によりブドウの皮が厚くなり、中の果汁が濃縮されたため、樽を満たすのに十分な果汁を供給するには通常よりも多くの房が必要だったからです。
酸度は、全体的に良好でしたが、リンゴ酸のレベルが低く、酒石酸の割合がはるかに高かったことが報告されています。 前者は太陽と熱によって「燃え尽き」、マロラクティック発酵中により柔らかくクリーミーな乳酸に変換されます。 これにより、ブドウが収穫されると変化しない硬い酒石酸がより顕著になるため、今年の暖かさにも関わらず驚くほどフレッシュ感に富んだワインが生まれたのです。

IN THE CELLAR / セラー

この2022ヴィンテージは、醸造面ではかなり容易なものに映りましたが、一部のマロラクティック発酵では、(リンゴ酸のレベルが低かったにもかかわらず)遅いものもありました。
一部のワインメーカーでは、2021年の熟成期間を短くしていましたが、この2022年にはほぼ通常通りの期間に戻しています。それは、ヴィンテージの濃度が高まった為、樽での熟成時間をもう少し必要としたからです。
近年、ブルゴーニュでは赤ワイン醸造に於いて、穏やかな抽出を求める向きが主流になっています。2022年も同様でした。果皮が厚いため、ブドウから色やタンニンを抽出する必要がほとんど無かったのです。それにより、パンチング・ダウン(ピジャージュ)はほとんど行われず、より穏やかなポンピング・オーバー(ルモンタージュ)が多く行われました。とは言え、興味深いことに、2022年のワインは、2018、2019、2020の様な深みのある色をしていないことも特徴的です。
全房醗酵は、依然として意見の分かれるテーマでもあります。ワインにフレッシュ感を与える為に全房を使用することを好む生産者も少なくありません。実際、以前は除梗を公言していたドミニク・ラフォンでさえ、茎を使う様になっています。
一方では、茎がpH値を危険なレベルまで上昇させ、微生物による腐敗を引き起こす可能性があると主張する生産者もいます。 いずれにせよ、生産者個人の好みに応じて造られ、私たちが紹介する生産者たちは、どちらのアプローチであっても成功しています。

THE WHITE WINES / 白ワイン

シャルドネは、近年のヴィンテージで、難しい状況に直面してもなお、フレッシュで、エネルギーに満ちたワインを生み出すことが出来ると証明しています。
このことは、世界中の温暖な地域の優れたシャルドネのワインを味わったことのある人なら驚くことではないでしょう。しかし、ブルゴーニュ産のシャルドネと他の産地のシャルドネには、重要な違いがあります。白のブルゴーニュは最近、他の競合する産地よりもかなり高い品質を誇っており、ミネラルを重視し、テロワールを表現することを通じてそれが正当化されています。

2022ヴィンテージは、個々の村の違いだけでなく、アペラシオン間の階層の違いをも忠実に反映されています。地域、村、プルミエ・クリュ、グラン・クリュの間には明確に階層があることが分かります。しかし、注目すべきは、過去には冷涼過ぎると考えられ、あまり人気の無かった土地であっても、現在では真に価値あるワインが生産されているということを忘れてはなりません。ブルゴーニュまたは村名レベルに分類される低地のブドウ畑だけでなく、オート・コート、オクセイ・デュレスやサン・ロマンなどの涼しい村にも一見の価値があります。

THE RED WINES / 赤ワイン

シャルドネはピノ・ノワールよりも手堅いブドウとされています。 したがって、ドミンク・ラフォンが語る様に、ブルゴーニュでは偉大な白ワインは常態化して行くものの、赤ワインにはさらなる大きな課題があると確信しています。 ワールドクラスのピノ・ノワール、特にブルゴーニュのピノ・ノワールの評価は、エレガンス、フレッシュさ、香り、繊細さ、ニュアンスによって導かれています。これらの評価基準はすべて、気温が高すぎると、アルコール度数が上昇し、酸度レベルが低下し、タンニンが硬くなる可能性があるのです。

テイスティングを通じて、2022ヴィンテージが、偉大な赤ワインのヴィンテージであることは明らかになりました。これらのワインは、完璧にバランスが取れており、特定の要素が他の要素を支配していることはありません。アロマとフレーバーには、しっかりとした赤い果実に覆われ、表現力豊かな花の様な特徴を誇り、あなたを魅了し、恍惚感に浸らしてくれることでしょう。 これらのワインと、2018年や2020年など最近のヴィンテージワインを区別すべきポイントは、タンニンの完璧な熟度に他なりません。口に含むと、ドライさの微塵も見られず、口当りにはとろけるような甘さで、クリーミーな特徴の味わいが口中を覆い包み込みます。

完璧なバランス、甘い果実味、そしてとろけるようなタンニンによって、2022ヴィンテージは、若いうちから親しみやすいワインであることは間違い無いでしょう。しかし、そのことが熟成を期待出来ないとか、直ぐに閉じる時期が来てしまうのとは別の問題です。それは、2022ヴィンテージの熟成のポテンシャルを過小評価することになるからです。つまり、ブルゴーニュに於いて、たとえ絶大なタンニン構造を擁していないとしても、それが長期熟成の有無には繋がらないからです。5年前、私が2017年について語った時と同様、ブルゴーニュワインに熟成のポテンシャル / 可能性を与えているのは、タンニンや力強さではなく、そのバランスにあるからです。

結果として、2022年の赤を近年のヴィンテージと比較するのは難しいと言えます。 ドミニク・ラフォンですら、10年以上前に遡ったとしても、2022年ほど良いと感じるヴィンテージを見つけることは出来無いとまで語っています。 2017年の開放的で魅力的なワインと似ている部分もありますが、2022年はさらに凝縮感を持ち、より熟成が期待出来るからでしょう。 マキシム・リオンはじめ一部の生産者は、もしブドウ栽培とワイン造りが今日の様に行われていたのなら、2005年は2022年の様になっていただろうとさえ語っています。 確かなことは、2022ヴィンテージは、私がブルゴーニュに携わってきた10年以上の中で最高のものである、ということです。


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