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2022ボルドー・ヴィンテージ・レポート 

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Bordeaux 2022 En Primeur Vintage report Summary
2022ボルドー・ヴィンテージ・レポート
By Berry Bros. &Rudd Fine Wine Team
翻訳:Ai Takizawa (Private Sales & Marketing Executive) 

 

始めに
2022ヴィンテージは猛暑に見舞われ、過去60年以上の中でも最も暑く、最も乾燥した年となりました。
しかし困難な天候条件にも関わらず、造り出されたワインは驚くほどのバランス性、新鮮な果実味とエネルギーに溢れています。 弊社のワインディレクターであるマーク・パードーMWは、2022ボルドー赤ワインについて「ワインは非常に特別な年であることを充分に表現しており、今後素晴らしい熟成を遂げるであろう。」と述べています。
白ワインも同様、「辛口、甘口にかかわらず、多くの楽しみを与えてくれる。」と期待していると述べています。
今回、2022ボルドー・ヴィンテージ・レポートとして、現地から生産者からの言葉、そのリリース情報そして評論家たちの見解などを分かりやすくまとめました。ご一読頂けると幸いです。

Mark Pardoe
MW, Wine Director, Berry Bros. & Rudd

「2022ヴィンテージは、極めて優れた年であった。」とマーク・パードーMWは語ります。  

ここでは、酷暑であったにも関わらず、これほどまでにバランス、新鮮さそして長期熟成のポテンシャルを得ることが出来たことをマーク・パードーMWと共に検証します。  

2022ヴィンテージは、ボルドーの人々にとって印象残る年になりました。ボルドーの一部地域では史上初めて灌漑が許可され、7月には山火事が発生したことからわかるように、非常に暑く乾燥した年であったことは極めて重要なポイントとなりました。しかし、収穫されたブドウは非常に上質でふくよかで骨格があり、口中に含むと豊かな風味と力強さがあります。加えて新鮮さとバランスを充分に感じることが出来ます。もし、歴代のヴィンテージとの類似性を問うならば、1947年や1929年と比較する評論家もいるほど、近年とのヴィンテージとは一線を画す仕上りを見せています。

生育サイクル初期の冷涼要因

2022年の冬は寒く、例年より乾燥し、2月に入ると平均気温が平年より高くなり始めました。
4月上旬の春の霜害(現在ではごく一般的)の影響があるまで、ブドウの樹は十分に成長することができました。前年とは異なり、今年は、キャンドルやフロストタワーを使用していたことで、霜害を逃れることができました。まさに九死に一生を得たといえるでしょう。
その後、6月までほとんど雨は降らず、7月、8月の猛暑を前に少しばかりの休息を得ることになりました。

霜害以外の自然災害として雹の影響が一年間で二回確認されています。
一つは、メドック北部のサン・テステフのすぐ上にあり、もう一つはマルゴーとボルドーの間で発生しました。右岸に続き、ブライとポムロールにまで雹被害が広がりました。これによって小規模のシャトーは大手シャトーに比べより甚大な被害を受ける結果になりました。 

夏季の記録的猛暑

2022ヴィンテージを語る時、最も重要なキーワードは、猛暑と干ばつです。この年、1959年以来最も乾燥した7月を迎え、5月から9月にかけて5回に分けて熱波が発生しました。最高気温は42℃を記録し、1947年以来歴代最高気温を打ち出しました。また山火事はランディラスとラ・テステ・ド・ブッフの約3万ヘクタールの森林を焼き尽くし、1949年以来最悪の被害となりました。幸い、果皮の厚さと干ばつのおかげで灰臭さや焦げた香りなど煙の汚染はありませんでした。

このような状況の中、ブドウの樹はたちまち元気を取り戻したように見えましたが、根が浅い若木は十分な水分を保持できず困難を強いられました。果実は小さく、果皮にしわが寄り始めましたが生育が完全に停止したり、熟成が止まったりすることはありませんでした。この過程が、収穫時の素晴らしいフェノールを得ることが出来た鍵になりました。夏季の剪定(間引き)を行ったことで、各ブドウの樹に実る果実量を調整したことで、収穫時のブドウの質を向上させたことも見逃せないポイントとなりました。

8月中旬、辛口の白ワインが収穫される直前にようやく雨が降りました。記録上最も早い時期に収穫を開始したシャトーもあれば、例年の収穫時期まで待機したシャトーもありました。天候は変わらず終始温暖で乾燥したままだったため、収穫は迅速かつ安全に行われました。ブドウの房は特に小さく凝縮感を持ち、果実は健全で完熟したものになりました。

例年と比較すると収量が少ないヴィンテージになりました。これは、夏季剪定と長期間に及んだ乾燥が果実の水分量を減少させたためです。例外的に、いくつかのシャトーでは20hl/haまで落ち込みましたが、一般的には35hl/ha程度にとどまりました。

醸造過程

ほとんどのシャトーでは色素とタンニンの抽出は穏やかに且つ経験に裏打ちされた判断で行うべきだと考えていましたが、一部自然の恵みを最大限に活かすきだと考えるシャトーもありました。
どちらの手法をとっても上質なワインを造り上げており、一概に甲乙つけがたいといえます。アルコール度数は14%前後と高めで、タンニンは非常に多く、力強い仕上がりです。またpHは高い方ですが、凝縮感とミネラルがあります。

例年への逆説とその背景

猛暑や乾燥などの天候条件下で生産されたにも関わらず、2022ヴィンテージはバランス が良く、エネルギッシュな印象を受けます。一般的にこのような条件によってワインはアルコール度数の高い、平坦なワインを生み出す傾向がありますが、2022年にはそのようなことはありません。これはいくつかの理由によって説明されます。

一つ目に、2月から続いた温暖(その後猛暑に繋がる)で乾燥した天候が、ブドウの樹に生育サイクルの初期段階で水を獲得するためのストレスを与えていたためでしょう。水へのアクセスを継続的に行うことで、ブドウの木は枝や葉の成長より果実へ優先的に水分を行き届かせるようになり、ブドウの樹の成長が止まること無く、夏の終わりの気温が極端に上昇した際にも、十分に順応することが出来たのです。

二つ目に、ご存知の方も多いと思いますが、過去2003ヴィンテージは猛暑の影響を受けた年でした。しかし、2022ヴィンテージとの違いは明白です。まず、2022年は夜間の平均気温が低く、ブドウに冷涼要因を与えました。ブドウは日中との寒暖差の恩恵を受け酸味を維持することに成功しました。20年の間に畑、土壌管理技術は革新的な向上を見せました。今やボルドーのブドウ栽培者の中で畑の土壌に生息する昆虫、線虫、菌根菌の生物多様性の重要性を理解していない人はいないでしょう。これらは、ブドウの樹にとってほとんど免疫システムのようなもので、気候の変化に個別に適応することを可能にします。今年は、各区画をより厳密に管理するなどの配慮がなされたことも例年の栽培理論の逆説につながる理由でしょう。

終わりに

左岸と右岸で大きな違いはありません。メドックとグラーヴのカベルネは大変素晴らしい品質で、ポムロールとサンテミリオンのメルロも同様です。保水性が高く、水はけがよい暖かい土壌や古木はより高品質にはなりやすい印象ですが、総合的にテロワールを十分に表現できており、非常に優れたヴィンテージであるといえるでしょう。
2022ヴィンテージは特に赤ワインにとって特別な年になったと言えるでしょう。バックヴィンテージと比較するならば、2005年や2018年になるでしょう。しかし、2005年より軽い仕上がりで、2018年よりかはよりリッチな印象を与えます。よって2022ヴィンテージを他年度と比較することは決して容易ではありません。白ワイン(8月に収穫された辛口の白ワイン)に関しては、例年よりふくよかでエキゾチック、寛大で丸みがあります。果実味は溢れる程の凝縮感を兼ね備えていて、口中にいれた直後からアフターまで充分味わいをお楽しみいただけます。ソーテルヌとバルサックの甘口ワインは、期待以上の出来栄えです。リッチでよく香るワインで、さらに今年は、極端に量が少ないわけではありません。


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