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ジャスパー・モリスによるブルゴーニュ2011年ヴィンテージ・レポート Burgundy 2011 Vintage Report

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Burgundy 2011 Vintage Report by Jasper Morris MW
マスター・オブ・ワイン ジャスパー・モリスによる
ヴィンテージ・レポート

収穫は8月に始まりました。8月に収穫が始まったのは今世紀3度目のことで、過去数百年においては1世紀に1度の割合でした。悲しいことに早目の収穫は豊かな生産量を保証するものではありません。生産者は生産量には満足していませんが、自分たちが造ったワインの品質については満足しています。
以前は、ブルゴーニュは世界中でそれほどポピュラーではありませんでした。一連の低収量で、特に赤ワインについては、供給と価格について本当に圧力が掛かり始めています。しかしながら、幸運にも、ポンドがユーロに対してやや強くなっているため、生産者からの値上げはほとんど据え置きにすることができましたので、英国ポンドでの価格は概して安定しています。
また、今年は新たに数人の秀逸な生産者をご紹介できることになりました。Bénigne Joliet [ベニーニュ・ジョリエ]は、12世紀から続くマノワール・ドゥ・ラ・ペリエールで驚嘆すべきワインを造っています。古典的な生産者としては、クロ・ドゥ・ヴージョでワイン造りを手掛けるChâteau de la Tour[シャトー・ドゥ・ラ・トゥール]のフランソワ・ラべ。それから、コート・ドゥ・ボーヌで非常に心躍るワインを造るDomaine Bachelet-Monnot [ドメーヌ・バシュレ‐モノ]もお勧めです。

The Weather 気候

なかなか厳しい冬でしたが、前年のような深い凍結もなく早く過ぎると、3月半ばには心地よい春がやってきました。風向きのパターンは異例で、主に北から吹き、涼しく乾燥したかと思うと、向きを変えて南から吹いて、暖かく乾燥しました。
最初の開花は、2007年とほぼ同様、5月10日という早さで、手入れの良いブドウ畑は元気よく一斉に開花しました。1976年のようにシーズンが進行すると、長期にわたり干ばつの恐れを抱えこむことになりましたが、それでも5月は2007年並みに4月よりかなり涼しく、少し余計ににわか雨が降り、ときおり嵐に見舞われました。村の古老は暑く嵐の多い夏になると話していました。どうやら、カササギが軒の間近に巣をかけていると、嵐の近い証拠のようです。
6月はじめ、嬉しい雨が降ったあと、すぐに節水令が出ましたが、すぐに大雨になりました。2007年の良くないパターンの再来かと思われましたが、6月の終わりには日射しが戻り、40℃を超える猛暑で、いくらかブドウの日灼けが起こりました。7月の第1週も乾燥し、1976年の再来が頭をよぎりました。7月7日、嵐の気配もなく、雨がしっかりとむらなく降りだすと、栽培家たちは喜びましたが、その後何日か降り続いたのは歓迎されず、結局、7月全体でみれば、例年より涼しく雨が多かったと言えます。
総じて予想よりも嵐の少ないシーズンでしたが、コルトン‐シャルルマーニュ(5月20日)、ジュヴレ‐シャンベルタン(7月23日)、ピュリニー‐モンラッシェでは少し霰に見舞われました。リュリは6月にも少々嵐にやられていましたが、7月12日、文字通り壊滅的な嵐に見舞われてしまいました。
8月は、初めはすっきりと晴れ渡りましたが、7月の小雨が降りがちなパターンに戻り、気温もこの時期の標準には届きませんでした。26日金曜日以外は長い雨はほとんど無かったので、多くの栽培家たちは、その翌週、好天の下で収穫を開始しました。

White Wines 白ワイン

白ワインのブドウ畑の開花は赤より順調でした。収穫の日程を賢明に判断した注意深い栽培者は、ふくよかな味わいと適度な酸味があり、中期熟成用として非常に良いバランスを備えた美味しいワインを造りました。2007年のような新鮮味がありますが、2007年よりはさらに重みがあります。マコンとシャブリについても非常に良い結果であったと言えます。このヴィンテージのもう一つの特徴は、赤白どちらにも言えることですが、ワインがそれぞれのアペラシオンや畑の特徴を見事に反映しているという点です。この年の多くのワインには、素晴らしい精緻さがあります。

Red Wines 赤ワイン

赤ワインのブドウについては、開花はそれほど順調ではなく、2009年12月の大きな凍結の影響がコート・ドゥ・ニュイの収穫高に影響を及ぼし続けています。一般的に収穫高は2010年と同様か、僅かに多かったのですが、平均的な収量をかなり下回るものでした。ブドウの味は良く熟していましたが、糖度は近年より低かったため、良い新鮮味が生まれました。成育期の状況は2007年に似ていたかもしれませんが、ワインは2007年とは全く異なります。なぜなら、ブドウの果皮により厚みがあるため、より濃厚な果実味と、ストラクチャーがもたらされるからです。ヴィンテージ比較は必ずしも正しくはありませんが、上質で新鮮な2002年の赤に類似する点がいくつかあります。

Jasper Morris MW
Burgundy Director

KEY POINTS

■ 2011年も赤ワインは低収量だが、白ワインは標準的な生産量。
■ アルコール度数が低いため、上質で新鮮な味わいとなっている。
■ 畑の特徴が極めて明確に現れている。
■ 白ワインは美味しくバランスが取れている。
■ 市場の圧力にかかわらず、英国ポンドでの価格は安定している。