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アラン・グリフィス ボルドー2012年ヴィンテージ・レポート Bordeaux 2011 Vintage Report by Alun Griffiths MW
Bordeaux 2011 Vintage Report by Alun Griffiths MW
マスター・オブ・ワイン アラン・グリフィスによる
ヴィンテージ・レポート
はたして、買うに値するヴィンテージなのでしょうか。収穫が始まって以来、どちらかというとパっとしない感じのニュースを耳にしてきたのですが、とはいえ百聞は一見にしかずです。ですから、先入観を持たないように心がけつつ、毎年恒例の新酒テイスティングに出かけていきました。
どんな年の評価も、天候の話から始めるべきではあるのですが、2011年はなんとも奇妙な年でした。春は驚くほど温かくて雨も降らなかったので、花が咲くのは早く、結実もうまくいきました。ところが、6月後半にさしかかると暑さが度を超し始め、雨が降らなさすぎるのが深刻な心配事になってきました。実際、ブドウ樹の中には活動を止めそうになっているものがあったのです。7月は涼しく、幸いにも多少の雨が降ったのですが、8月は良いとも悪いとも言えない月になりました。全体としては平年より涼しかったのですが、何日かひどく暑い日があったのと、嵐が何度か来たのです。9月は温かく、雨も少なかったので、ブドウは完熟することができました。しかし、7月と8月という大事な月に気温が低めだったせいで、2009年のように温かく、真に偉大なヴィンテージのワインに見られる豊かさと肉付きが欠けていました。
房によって成熟度合いにバラツキが見られ、そのせいで畑とセラーで大変な労働が求められたのも、この年の特筆事項でしょう。完熟していない果実を見つけ出し、取り除かねばならなかったのです。どれぐらい大変だったかを知っていただくために一例をあげると、オー・バイイのようなトップ・シャトーでは、収穫作業に3,800人時かかりました。一年前は2,800人時でしたから、30%以上増えたわけです。
2011 Red Bordeaux 2011年のボルドー赤ワイン
さて、2011年のワインはどんなスタイルなのでしょうか。確かに、品質には相当なバラツキがあります。先に述べたように、選果作業を随分しないといけなかったわけですから、その余力があった生産者――人手とお金に恵まれている生産者は総じて、余裕のない造り手と比べて品質の高いワインを造っています。ということは、このヴィンテージはプティ・シャトーには厳しかったということです。
ブドウは熟してはいたものの、過去二年と比べれば線の細いものでした。それでも力強いタンニンはたっぷりとあって、その水準は記録的な2010年のブドウとほぼ同じ。それゆえ、醸造時にブドウを優しく扱ってやるのがとても大切になり、タンニンを抽出しすぎないようにする必要がありました。この方針を貫いた生産者は、ピントがピタリと合っていて、新鮮でエレガント、長期熟成能力も備えたワインを産み出しています。
このヴィンテージが、2009年や2010年と同じ水準だとうそぶくものは、ボルドー広しといえどもさすがにいないでしょう。ただ、2008年、2006年、2004年、2002年よりは優れているように思われます。ということは、値段が重要ということです。理屈の上では、2008年と2009年の初値の間になるはずで、どちらかと言えば2008年に近いものになるでしょう。シャトーが当初ほのめかしていたのは、今年は早めに値段を発表し、先に述べた見込みをある程度は反映した値付けになるだろうというものです。もしその通りになれば、一部のワインについては購入を強くお勧めしようと考えています。一方、十分な値下がりが起きなかったなら、今年の先物には手を出さずに待つか、もっとお買い得な古いヴィンテージを探すほうが賢明でしょう。
2011 White Bordeaux 2011年のボルドー白ワイン
白ワインはどうでしょうか。盛夏の気温が比較的低かった年は、たいてい辛口の白がとても良い出来になります。確かに素晴らしいワインもあるのですが、ペサック=レオニャン地区には、ブドウを少々熟させすぎてしまった生産者が少数ながらいました。出来上がったのは、エキゾチックに過ぎ、トロピカルフルーツの香りも強すぎるワインで、余韻の引き締まりがわずかに足りません。一方、ちょうどよいタイミングでブドウを摘んだシャトーは、豊かな果実味とミネラル風味が美しく拮抗する、見事なワインを仕上げています。全体を持ちあげる、シャキシャキした酸味が心地よいです。オー=メドック地区にあるシャトーのいくつかは、辛口の白ワインも生産しているのですが、この年には大変に素晴らしい結果を出しました。ペサック=レオニャンを凌駕するようなものも見られます。皮肉な結果と言えるでしょうか。
ソーテルヌについて申し上げると、まだ熟成の初期段階だとはいえ、今のところ極めて優れた年のように見えます。状況をつかんでもらうには、シャトー・ディケムの才能あふれる醸造責任者、サンドリーヌ・ガルベイ女史が、自分のワインについてしたコメントを引用するのが一番でしょう。「今年は、貴腐菌の繁殖にとって完璧な条件が揃いました。9月が温かく乾燥していたおかげで、貴腐がすばやく広がりましたし、出来上がったワインには素晴らしい芳香と、純粋さ、フレッシュさが備わっていました」。酸味は控えめなほうですが、ワインのピュアさ、細かい仕上げの確かさが申し分ないので、甘ったるく重い感じがまったくないのです。バルサック村のワインがとりわけ優れているように思われましたが、ソーテルヌAOC全体で優れたワインが見られます。
Alun Griffiths MW
Berrys' Wine Buying Director