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アラン・グリフィスによるブルゴーニュ2010年ヴィンテージ・レポート Bordeaux 2010 Vintage Report

Bordeaux 2010 Vintage Report by Alun Griffiths MW
マスター・オブ・ワイン アラン・グリフィスによる
ヴィンテージ・レポート

2005年は近年類まれなる歴史的なヴィンテージでした。その後、それに匹敵、また場合によってはそれを凌ぐ2009年が出ました。そして、今回、ボルドーで1週間ワインテイスティングをしてみて、2010年は両方の年を上回るだろうと思わせるものがありました。私は、ワインの品質という点において、これほどまでに興奮に酔いしれたテイスティングを経験したことはありません。

2010 Red Bordeaux 2010年のボルドー赤ワイン

ボルドーの赤ワインは、主に、果実味、アルコール、タンニン、酸味を含んでいます。ワイン生産者にとって至高の目標は、これら様々な要素の完全な調和を実現することです。時にこれは不可解なワイン用語ではありますが、これを我々ワイン商は'バランス'と呼びます。

さて、2010年はどうなのでしょうか?全ては天侯から始まりますので、私は、いつもネゴシアン ビル・ブラッチが毎年出す包括的なレポートを参考にしています。これはワインの背景を探るのにとても重要な資料となります。
2010年、ブドウの成長期は極めて乾燥していました。場合によっては1949年以来最も乾燥していたと言えます。従って、ブドウは皮が厚く小ぶりでした。これにより、果実味、そして皮に含まれるタンニンも、かなり凝縮しました。夏も暖かかったので、糖度は非常に高いレベルに達しました(特にメドックでは)。糖によりアルコールレベルが決まりますので、糖が高すぎると、ブドウが非常に濃縮して、非常にタンニンが高く、アルコール分が高いワインができるというリスクがあります。
理論的には、酸味によりバランスを取らない限り、これらは非常に重苦しいワインになる可能性がありますが、'自然'が救いの手を差し伸べてくれました。8月と9月に涼しい夜があったことにより、ブドウに高いレベルの酸が保たれました。それは出来上がったワインに顕著に現れ、この酸味こそが、ワインに驚くべき新鮮味を与えるジグゾーパズルの最後の1ピースとなり、完璧なバランスをつくることになりました。

スタイル的に、このヴィンテージは2009年とは全く異なります。つまり、タンニン、酸味、凝縮感が高いということは、とても長熟なワインであるということになります。素晴らしく魅惑的で華やかで、若いうちから楽しめる2009年ほどとっつきやすくはないでしょう。

過去の類似したヴィンテージを挙げろと言われ苦闘していたシャトー・オーナーがいましたが、私も同様です。このヴィンテージは、タンニン、酸味、凝縮度が高いという点で、過去の記録を打ち破っています。もし、どうしても答えなければいけないというのであれば、2005年に類似性があるとは言えるでしょう。しかし、全てにおいて、2010年の方がさらに強いものを持っています。年輩の人は、1966年(非常に長くもちこたえたことで知られる年)のことを口にしますが、比較を求めること自体が不当と思われるほど、異例なヴィンテージです。

要約しますと、グレート・ヴィンテージであることは確かですが、一様にそうとも言い切れません。中には、皮からより多くのタンニンと色を抽出しようとして、タンニン&アルコールの怪物のような魅力の無いワインを造ってしまったところもあります。素晴らしいワインを造るために必要なすべての要素を備えたブドウに、ワイン生産者が過度の干渉をする必要はありませんでした。そして、最高の生産者たちは、軽妙に舵取りをして、素晴らしいワインを造りました。

2010 White Bordeaux 2010年のボルドー白ワイン

良質な辛口白ワインを生産するには素晴らしいコンディションでしたが、全体的に若干期待外れであるということを認めざるをえません。多くのワインは新鮮な、セミ‐トロピカルのアロマがあり、中にはエキゾチックな感じのものもありますが、味わいの精度や特徴に欠けています。

トップランクの生産者は、そうなることを回避し、見事なワインを造りました。しかしながら、ヴィンテージ全体としては、伝説的な2007年のレベルまでは達していません。

ソーテルヌでは、幸いにも、例年よりも大きなボリュームの収穫がありました。しかしながら、皮が厚いために、秋になってしばらくするまで、ボトリティス(貴腐菌)が付きにくかったため、結果として2001年のような複雑味のあるワインや、2007年のような豊かさのあるワインはできませんでした。その代わりに、酸味がワインに新鮮味を与え、クリーンで、ピュアで、香り高い甘みのあるワインとなりました。比較するとしたら、1988年ヴィンテージが思い浮かびます。

アラン・グリフィス、マスター・オブ・ワイン
Alun Griffiths MW
Wine Buying Director